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ぬいぐるみ作りは楽しくない

ぬいぐるみ作者のシビアなエッセイ。
ぬいぐるみを自作しようとお考えのかたは、これを読んで挫折しましょう。ほっほっほ。
猫?ぬいぐるみ

人気の動物ぬいぐるみ

「ぬいぐるみ」といえば、布を縫って何か詰めて形作ったもののことですね。人間の形をしたものは「人形」と呼ばれ、ぬいぐるみはそれ以外を指すことが多いようです。

私が作る人形は基本的に縫って詰めた「ぬいぐるみ方式」ですが、このページでの「ぬいぐるみ」は、犬・ネコ・馬など動物のことです。

人形作りの息抜きとして、本を見ながら小さな子猫のぬいぐるみを作ったのは、2001年春のことです。
子猫

その後ブランクを経て、2004年に等身大の犬や猫を作り始めました。最初の犬は書物を参考にしましたが、次の紀州犬からは概ねオリジナルです。

縫って詰めることに慣れているとはいえ、動物は体型も勝手も違い、なかなか上手にできません。私のぬいぐるみは「かわいらしさ」よりも「シンプルなリアルさ」を打ち出しているので、ときとしてブサイクになったり。

それでもページに載せると好意的な反響があり、買いたい、自分でも作りたいというメッセージが世界中から寄せられます。
ぬいぐるみが大好きな人って、ほんとに大勢いらっしゃるんですね。

商売が難しい手作りぬいぐるみ

ぬいぐるみファンならば、もちろん市販品もチェック済みでしょう。

おもちゃ屋さんや雑貨店には、たくさんのぬいぐるみが飾られています。携帯マスコットから実物大超大型犬まで、サイズもさまざま。価格は100円~9,800円?

ぬいぐるみって、なんと安く売られているんでしょう。安物はたいてい近隣諸国産のようですが。
安くても見た目は立派です。
可愛いデフォルメタイプや、本物そっくりリアルタイプ。自力で立つ猟犬、飾っておける迫力ライオン、子供が乗れそうなお馬さん、くたくた癒しネコ、抱いて寝たい洗濯可能ブタ・・・。

トイ○ラスのかごの中に、体長50cmほどのややリアル犬がどっさり詰め込まれて、300円の値札がついていました。なんだか悲しくなってしまいます。
同程度のものを自分で作るなら、材料費だけで1,500円は下らないでしょう。

近くのリサイクルショップでは、畳1枚くらい占領しそうな巨大犬が3,000円。中古だけどほとんど汚れていないようでした。

そんなわけで、もし手作りのぬいぐるみを商業ペースにのせるとしたら、強力な付加価値が必要です。
「お手製は世界にひとつ」・・・それは当たり前であって、強みにはならないのです。

専門店のビンテージベアが小さくても数万円するように、マニアさえつけば正当な価格での取引も可能でしょう。

私自身は「シンプルでややリアル」という方向性に自信があり、ある程度賛同を得られると思っています。が、自信を持ってリリースできる技量がまだまだ足りません。

ぬいぐるみ制作に立ちはだかる難関

ぬいぐるみ作りって、苦労の連続なのですよ。

まず材料が高価です。そして手に入りにくい。

ファー布は毛の色や長さ、質感が好みに合うものを見つけるのは困難で、たいてい妥協が必要です。
私は時々染めて使いますが、化繊だから染まりにくいのです。染めた直後と日にちが経ったあとでは色合いが違ってきます。しかも熱湯につけると毛羽立って手触りが悪化します。ずいぶんたくさんの布を無駄に捨てました。

目や鼻の材料も不備です。

特に鼻は適当なものがなく、粘土をこねてアクリル絵の具を塗って自作します。手製だから左右がいびつだったりするけど、まあ、しかたないですね。人間にも鼻が歪んでいる人、いるんじゃないですか?

目玉は比較的種類も多いのですが、形は単一で、色も種類が少ないか、くどくて透明感に欠ける不自然なものばかりで、満足できません。
しかも自作できないのが悩みです。
自分でガラスを吹いてグラスアイを作る凝り性もいらっしゃるようですが、設備費などハードルは高い。

キャッツアイ型の目は、ここいらでは緑1色しか手に入らないので、塗り替えて使うことがあります。
緑のペンキ(?)を除光液でぬぐい取り、青やゴールドのマニキュアを塗るのです。除光液が少しでも目の表面につくと、プラスティックが濁って使いものにならないので、神経を使います。これもだいぶ失敗して廃棄しました。

まあ、つまりですね、世の中は素人がぬいぐるみを作るのに適した構造じゃないんですよ。

まだまだあります。
ぬいぐるみ作りはひどく不健康な作業です。

裁断したファー布の毛が散らかり、もやもやと宙を浮遊します。

作業に当たっては、長い上っ張りと帽子にマスク、ときには眼鏡の着用が不可欠です。掃除機を手元に置いて、こまめに吸い取るのもいいでしょう。空気清浄機はあまり効果がありません。粒子が大きすぎるのです。

夏場は冷房をガンガンかけないと汗だくになります。だから寒い季節にしか作らないのが原則。

こんなに苦労してやっと出来上がったぬいぐるみがブサイクだったら・・・ああ、悲劇です。
好きで好きでたまらなくて、使命感に燃えていないと、ぬいぐるみなど作れないのですよ。

試行錯誤の日々

追い討ちをかけるために、失敗の軌跡を披露しましょう。

プロの手になる型紙とインストラクションに従って作れば、そうそう失敗はないと思います。
しかし意欲的な人はそれに満足できなくなるはずです。

全くオリジナルのデザインで型紙から起こしたい。
それは骨なんですよー。

人形作りに経験を積んでも、動物にはあてはまりません。
ご存じのように、人間は平面的な顔と体をしています。2枚の布を前から見た人のシルエットに縫い合わせてわたを詰めても、人形っぽくなります。ラグドールの初歩的なものはそういう感じで作られていますね。

動物はあまりに立体的なので、そうはいきません。強いて言えば、横から見たシルエットに縫えばそれらしくなるかも。それだと足は2本です。

前述したように、材料が高いので、しょっちゅう失敗するわけにはいきません。
新しい型に取り組む際は、ネルやシーチングで試し縫いをします。

えーっ、何これ?
What is this?紀州犬です、わはは。

切って縫って詰めてみて、まずいところを少しずつ直していくんですね。つまんで縫ったり、切り開いたり、角度を修正したり。
2、3度トライすれば、だいたい思い描いているものに近くなります。

ネルとファーでは伸縮率が違うことを考慮に入れなければなりません。ネルでは細め(シーチングならばもっと細め)くらいでちょうど良いのです。

ニューファンドランドとキャバリエ・キングチャールズ・スパニエル。
犬の顔

犬はまあまあとしても、猫はちょとひどいかな。
うぎゃ

初めは顔が尖って、全然猫らしくならなくて苦労しました。
猫というものは犬よりも顔が平面的で耳が大きいのですが、三角形で立体的な顔の猫も多く、どうもその他の部分でも猫らしさをアピールする必要があるようです。

しかし平面的な顔はごまかしも利きます。
小さなヒマラヤン(11.5cm)のように、丸や棒形に縫ったファーを組み合わせただけでそれらしくなったケースもあります。
適当に作ったので、再び同じものができるかどうか不明ですが。
ブルーポイントのヒマラヤン

これは馬。胴が太く脚が軟弱で立てません。
少し改良して、立てるようになりました。
死にかけた馬?馬の試作品

その他いろいろ試作しました。その「ほんの一部」です。
失敗作の山ロップイヤーうさぎだけは、本を見て縫ったから、わりとまとも。

それでも作るぞぉ

いろいろと負の面を述べましたが、それでも私がやめないのは、ぬいぐるみ作りに魅力を感じているからと認めます。

このページを最初にリリースしたころは、「犬猫にはさほど食指が動かず、コウモリや竜の落とし子など、よそでは滅多に見かけないものを一からデザインするときにやり甲斐がわく」と書きました。

それは確かに事実です。だからいろんなものにトライしました。

でも最近は、「ライフワークにするなら猫かな」という気分に傾きつつあります。

猫のぬいぐるみでほんとうに可愛いと思える市販品や作品に出会ったことがないのです。犬ならいっぱいいるのに・・・。
実際に作ってみても、猫の顔は非常に難しい。マンガ系はそこそこキュートにできても、リアル系は不気味に近いような顔つき。何がいけないんでしょ。

そういうわけで、「リアルでもなるべく可愛い」猫作りが今後の課題です。

いろいろなぬいぐるみ

犬ぬいぐるみ
猫ぬいぐるみ

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